福島地方裁判所 昭和43年(わ)12号 判決 1968年6月18日
本店所在地
福島市本町二番一二号
商号
合資会社若狭屋呉服店
代表者氏名
無限責任社員 古川昌助
本籍
福島市本町九番地
住居
同市同町二番一二号
会社役員
古川昌助
大正四年七月五日生
右の者に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官長山頼興出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人合資会社若狭屋呉服店を罰金一五〇万円に、被告人古川昌助を懲役六月に処する。
但し被告人古川昌助に対し、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人合資資会社若狭屋呉服店は、福島市本町二番一二号に本店を置き呉服販売を目的とする資本金五〇万円の合資会社であり、被告人古川昌助は、右会社の代表社員としてその業務全般を統括する者であるが、被告人会社の業務に関し被告人会社に対する法人税を免かれる目的をもつて、売上、仕入、棚卸商品および雑収入等の一部を除外し、支払利息を公表帳簿に架空計上するなどの不正の手段によりその所得の一部を秘匿し、
一、被告人会社の昭和三九年二月一日から昭和四〇年一月三一日までの事業年度における実際の所得金額が一二六四万六三二五円で、これに対する法人税額が四六五万二九〇〇円であつたのにかかわらず、昭和四〇年三月三一日所轄福島税務署長に対し所得金額が九万一、三五四円でこれに対する法人税額が二万七、六一〇円である旨虚偽の法人確定申告書を提出し、もつて被告人会社の右事業年度の正規の法人税額との差額四六二万五、二〇〇円をほ脱し、
二、被告人会社の昭和四〇年二月一日から昭和四一年一月三一までの事業年度における実際の所得金額が一、〇八〇万七、〇五二円で、これに対する法人税額が三八〇万六、〇〇〇円であつたのにかかわらず、昭和四一年三月三一日所轄福島税務署長に対し所得金額が五万八五〇円でこれに対する法人税額が三、二三〇円である旨虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて被告人会社の右事業年度の正規の法人税額との差額三八〇万二、七〇〇円をほ脱し、
三、被告人会社の昭和四一年二月一日から昭和四二年一月三一日までの事業年度における実際の所得金額が一、三三三万四、四四九円で、これに対する法人税額が四四五万二、四〇〇円であつたのにかかわらず昭和四二年三月三一日所轄福島税務署長に対し所得金額が二万九、四四〇円でこれに対する法人税額が三、七五〇円である旨虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて被告人会社の右事業年度の正規の法人税額との差額四四四万八、六〇〇円をほ脱し
たものである。
(証拠の標目)
右判示事実は
一、被告人古川昌助の当公判廷における供述
一、同被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書九通ならびに検察官に対する供述調査一通
一、同被告人作成の上申告五通
一、古川伊津子(二通)菅野隼吉の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一、大蔵事務官阿部真一作成の脱税額計算書三通、銀行調査書、証券会社調査書各一通、未納事業税額計算書三通、ならびに法人税額の修正申告書謄本一通
一、大蔵事務官富樫良治作成の納税証明書三通
一、山田広、小林長司、秋野弘作成の各上申書
一、登記官吏作成の登記簿謄本
一、押収にかかる法人税確定申告書三綴(昭和四三年押第二七号の一ないし三)、総勘定元帳四冊(同号の四ないし七)、金銭出納帳一冊(同号の八)、銀行関係メモ帳一冊(同号の九)、雑収入明細帳一冊(同号の一〇)、当座小切手帳一冊(同号の一一)、普通預金通帳二冊(同号の一二、一三)、指定金銭信託証書一冊(同号の一四)、手帳二冊(同号の一五、一六)
を総合してこれを認める。
(法令の適用)
被告人会社の判示第一の所為は昭和四〇年法律第三四号附則第一九条により同法による改正前の法人税法第五一条第一項、第四八条第一項に、判示第二、第三の各所為は法人税法第一六四条第一項、第一五九条第一項に該当するが以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四八条第二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告人会社を罰金一五〇万円に処し、被告人古川昌助の判示第一の所為は昭和四〇年法律第三四号附則第一九条により同法による改正前の法人税法第四八条第一項に、判示第二、第三の各所為は法人税法第一五九条第一項に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を選択し以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条本文、第一〇条により犯情最も重い判示第一の罪の刑に決定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役六月に処し、なお諸般の情状に鑑み同法第二五条第一項を適用して、同被告人に対し、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予することとする。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 金末和雄 裁判官 野口喜蔵 裁判官 中野保昭)